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2006年09月28日

日本のいびつなドラフト制度(2)

マネー・ボール

2. 希望獲得枠のおかしさ

 1の観点からすれば、まさにおかしいと言えるのが希望獲得枠の存在だ。欲しい選手、しかもドラフト1位に値する優秀な選手を確実に入団させられるというなら、そもそもドラフトの意義じたいが薄らいでしまう。結果、人気球団にいい選手が集まるようになり、戦力の均衡が実現できるはずもない。

 しかも、別の観点からも問題があると言わざるをえないだろう。それは、選手間の公平性についてだ。ドラフト1位候補の選手にだけ球団を任意に選べる権利を与え、ほかの選手には指名を受けた球団へ強制的に入らせるというのでは、あまりにも不公平だ。

 もちろん、スポーツの世界というのはある意味、実力主義の世界ではある。だから、アマチュア時代にがんばった選手に対して“特権”を与えることを是とする考え方もある。だが、そうした実力主義はやはりスポーツの面に留めておくべきであって、選手の基本的な権利の面にまで及ぼすべきではない。

 単純に試合をするだけならともかく、選手たちにはこれからの生活がかかっている。それは言い換えれば、人生を賭けているということだ。一般の企業の社員がキャリアや仕事の成果によって報酬に差をつけられることはあっても、基本的な人権を阻害されるがないように、プロ野球の世界でもおかしなところで差をつけることはやめるべきだろう。

3. 抽選という方式

 また、倫理的におかしいといえば、複数球団による同一選手への指名が重なった際のくじ引きのことも挙げられる。ウェーバー制でやらないことによる弊害のひとつともいえるが、2で示したことと同じくこれではただの運任せであって、本来の目的である戦力の均衡がはかれるはずもない。

 そしてより根本的な問題としては、若者の将来を博打的な方法で決めることが、はたして倫理面から許されるのかどうかということだ。言うまでもなく、人生には博打的な要素がいくらでもある。しかし他者が、しかも強制的にある人物の将来をゲームのような方法で決めようとすることは、やはり認められないと言わざるを得ない。

4. 分離ドラフト

 最近導入されたプロ野球のシステムの中で最も意味不明なのがこれだ。あえて好意的に見るなら、高校生に早めに進路を決めさせて、これからのことを考える余裕を与えてあげる目的があるとも考えられる。

 しかしそれならば、初めから大学生・社会人も含めて時期を前倒しすればいいだけの話であって、高校生だけを分離する必然性などどこにもない。高校生よりも上の世代したところで、早めに決めてくれるに越したことはないのだから。

 結局、これは一部の発言力の強い球団が有望な高校生とそれ以上の選手を“両取り”したいという思惑から、ごり押しして誕生させたかなりいびつなシステムなのである。

 まったくもって現在の球界を象徴しているともいえるが、いつまでもこんなことを続けていたら、ファンが離れていってしまい、プロ野球が持たなくなる。一般の人々は、球界の不透明な体質に辟易している。そのことに対して、関係者は自覚があるのだろうか(ないような気がするが)。

5. まとめ

 ひとつはっきりと言えるのは、現在の日本のドラフト制度がひどく中途半端なものであるということだ。戦力の均衡もできなければ、「職業選択の自由」という選手の基本的人権も守られていない。「バランスを取っている」などという言い訳では誰も納得しないはずだ。

 大事なのは、他のシステムとの連携だろう。選手にはリーグ全体の活性化のために、彼らが本来もつべき権利の一部を我慢してもらっている。だからこそFAという制度は必須なのだが、こちらも取得までの期間が長すぎたり、条件が厳しすぎるなど不完全なままである。

 ドラフトとFAは繋がっている。つまり、どちらか一方だけでなく両方の改革が必要だと言うことができる。

 しかしここまで見たきたように、ドラフト制度の異常さは現在の球界の異常さを物語っている。おそらく、内部からの改革は難しいだろう。外部からの介入を待つしかないのかもしれないが、どんな優れた人物がやってきたとしても周りが足を引っぱり続ければ、何もかもうまくいかない。

 いずれにせよ、ドラフトは契約金の高騰を抑えるという金銭的な面での必要性もあるが、そんなこと以上に戦力を均衡させることによってリーグを支える基礎となるべきものなのだ。それがしっかりしないことには、他の面でいくら修繕を重ねたところでいつかは全体が瓦解してしまうだろう。そうなる前になんとかしてほしいのだが、はたして。

投稿者 KATANA : 2006年09月28日 16:24

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