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2006年07月29日

「海賊版被害額」の誤謬 (4/5)

誤謬による弊害

 さて、ここまでは「海賊版被害額」の誤謬について見てきたが、では、 実際にそれによってどういったことが引き起こされてしまうのだろうか。

 上記のとおり、訴訟において実態にそぐわない賠償金が課されるというのもひとつの問題である。そして、「海賊版被害額」に惑わされて、 必要以上に権利者に有利な法や制度やつくられてしまうのも問題だろう。それによって、 一般の利用者の側にとってデメリットが大きくなりつつあることは間違いない。

 しかし、実は権利者の側にとっても大きな落とし穴がある。それは、いたずらに被害者意識が強まってしまうことだ。たとえば、次のA・ B二つのパターンを考えてみよう。

A:「あなたの作品の海賊版が、100回もやり取りされました。被害額は1,000万円です」

B:「あなたの作品の海賊版が、100回もやり取りされました。しかし、被害額の実態はよくわかりません」

 もしAのように言われたら、額が額だけに驚き戸惑ってしまう人が多いだろう。反対にBのように言われたら、 問題だとは思いつつも冷静に受け止められる。

 これが10億・100億の被害だとでも喧伝したら、誰だって慌てふためく。つまり、 実態以上に被害が出ていると勘違いして、それによって過激な行動に出てしまうのである。

 その結果が音楽業界による顧客の提訴であったり、 呆れるほどに強固な著作権保護であったりするのだろう。こうした知的財産の問題にかぎらず、 被害者意識が強くなりすぎると恐怖心から過剰防衛するようになり、それはひるがえって他者への攻撃に転化することが多い。

 いわば、現在の知的財産関連の世界、特に音楽業界は実態以上にふくらんだ海賊版被害額に惑わされ、 一種の恐慌状態にあるといっていい。そのため、第三者が冷静な指摘をしてもまったく聞き入れることができず、 反対に常軌を逸した行為に打って出ることがあるのだ。

 その一方では、防衛のために法制度によって強固に保護されるために活動をする。その結果は、 複雑かつ硬直的になりすぎたそれらによって、利用者(消費者)だけでなく権利者の側まで法という名の鎖でがんじがらめにされてしまうのである。 権利者のために制定したはずの項目が、かえって彼らやクリエイターにデメリットを及ぼしてしまう理由の一端はここにある。

 何事も、現実からかけ離れたことを信じ込むとろくなことにならない。それは、政治しかり知的財産問題しかりである。 権利者の側のためにも、より正確に実態を把握する必要があるだろう。

(次回につづく)

投稿者 KATANA : 2006年07月29日 14:37

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