2006年07月25日
被害額の算出方法
知的財産のさまざまな問題が叫ばれるようになって久しい。中でも著作権に関しては、 無数の訴訟が起こされたり侵害行為がネット上で横行するなど、何かと話題に上っている。
ただ、著作権侵害による被害は、実は他の分野におけるそれとは事情が異なる面が多い。一口に「被害額」といっても、 本質的に違っている部分があるのだ。それについて以下に論じてみたい。
まず、商業的な著作物が違法にコピーされたりした場合の被害額はどのように査定するのだろうか。これは、 単純に商品の単価で計算することが大半である。たとえば、1,000円の音楽CDが100回違法に複製されたら10万円の被害、といった具合に。
けっして正規に販売されていた場合の利益分で計算することはしないのである。200円の利益が出ていたはずだから、 2万円の被害とは考えない。
これは、自動車などの物的な財を考える場合にはまったくもって妥当である。そういった“モノ”を製造する場合には、 原材料費や機械設備の維持費などを含めて、いわゆる製造コストがかかっている。だから、1,000円のモノが盗まれた場合、 そっくりそのまま1,000円の被害であるといっていい。
しかし著作物、中でもデジタル・メディアを利用したものの場合はどうだろう。確かに、製造コストはかかってはいるだろう。音楽の場合、 ミュージシャンの人的費用やスタジオの利用費などが考えられる。
ただし、複製物には費用はほとんどかかっていない。違法コピーについてわかりやすくするために、 音楽のデジタル・メディアと自動車とを比較しながら考えてみよう。実際に複製という行動をとっているのは各ユーザーである。 あくまで工場でつくっている自動車とは違う。ネットから音楽ファイルをダウンロードした場合、輸送費(ネットの利用費) を負担しているのはあくまで各ユーザーである。各販売店へ自費で輸送している自動車とは違う。
つまり情報財の場合、たとえ違法な複製行為であってもその際にかかるコストを負担しているのは、まぎれもなく各複製者なのである。 ここで言いたいのは、自動車などのモノが実店舗で盗まれるのと、デジタル・メディアがネットなどで違法に複製されるのとでは、 まったく次元の異なる問題だということである。言い換えれば、物的な財と情報財とを混同して考えてはならないということだ。
この点だけでも、海賊版被害額の算定方法がいかにおかしいかがよくわかるだろう。1,000円の音楽CDが複製されたからといって、 そっくりそのまま1,000円の被害というわけではない。上記のとおり、情報財が複製される場合のコストは複製者が負担している。
ただ、オリジナルの制作に費用がかかっていることは事実なので、商品の単価ではなくその利潤の額で被害額を計算したうえで、 制作コストを上乗せしたものが最も実態に近い数字になるだろう。
考えてみれば単純なことである。しかし、著作権者の側はまず間違いなくそういった計算をしない。なぜなら、 実態より大きい被害に見せかけることで、周囲から(特に政治的な面で)自分たちに有利な要素を引き出そうという考えが根底にあるからである。 言葉をかえれば、同情を買おうとしているといってもいい。だから、 どう考えても実際の被害よりも大きくなってしまうことは明白であるにもかかわらず、商品の単価を基準にして被害額を算出しようとするのである。
ただし、「海賊版被害額」というものはもっと実態があいまいな面さえある。その原因は、 複製者の心理的な側面を完全に無視していることだ。
(次回につづく)
投稿者 KATANA : 2006年07月25日 09:42
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