2005年07月11日
ここ最近、仕様に関するソニーと東芝の交渉が決裂だとか、著作権保護の仕組みがどうなるのかといった次世代DVDにかかわる話題が多い。 ソニーのBlu-ray Discに至ってはすでに発売されており、実用の段階にも入っている。
しかし、その根本的なところでひとつの疑問がある。はたして、次世代DVDは普及することができるのだろうか?
次世代DVDが期待される根拠は、もちろん大容量化だ。映画ならばDVD以上にクオリティの高い映像と音声をつめ込むことができ、 記録型メディアとしてはより多くの情報を入れることができるようになる。
もちろん、これら機能的な面からいえば新技術はすばらしい。ただし、 技術的に優れているからといって必ずしも普及するとはかぎらないのが世の常だ。
たとえば音楽メディアのスーパーオーディオCDやDVD-Audioは、CDよりも遥かに音質面で高いレベルにあるにもかかわらず、 結局のところ大半の人々には受け入れられなかった。
なぜだろうか。ひとつには、CDが普及しすぎたという面がある。CDは音に関しては問題があるが、 使い勝手がいいため爆発的に世に広まり、定着した。技術的な商品にかぎらず、 こういったデファクトスタンダードとなったものをもう一度塗り替えるのは、並大抵のことではない。
もうひとつ、人々の現状への満足感という面も大きい。例に挙げたCDでは、音質にこだわる一部の人を除いて、 大半の消費者がCDですでに満足している。明らかな欠陥があるのならともかく、 それなりに納得のいくベルならばあえて新しいものに手を出そうとしないのは、人間の心理として当然のことだ。
上のことと関連して、別の理由もある。それは、初期投資にかかる費用だ。どんなに素晴らしい技術であっても、 それを利用するために多くのコストがかかってしまうのでは、当たり前だがほとんどの人は手を出そうとしないだろう。 SACDやDVD-Audioが普及しなかったのは、結局のところそれを再生するためのハードルが高すぎたのだ。
これらのことを踏まえて改めて次世代DVDを見ると、いくつか疑問点が出てくる。まず第一に、 ROMでも記録型でもこれほどDVDが普及した現状で、それを塗り替えることができるのか。今やDVDは、 映画でもビデオの記録でも欠かせないものとなった。この状況で、ハードの刷新を含めて人々を移行させるのはけっして容易なことではない。
第二には、既存のDVDへの満足感を打ち破ることができるのかという問題もある。一部のAV関連に熱心なファンはともかくとして、 質的な面でもDVDで十分だと考えている人は多いのではないだろうか。筆者自身、もちろんクオリティが高くなるにこしたことはないが、 DVDで不満か満足かと問われれば迷わず後者を選ぶ。消費者にとって致命的な欠陥があるのでないかぎり、DVDは“必要十分”なメディアなのだ。
最後に、このことが最も懸念されることでもあるが、次世代DVDを利用するための初期費用はどれくらいなのか。DVDの場合、 PlayStation 2というゲーム機が果たした役割が大きい。 Blu-rayは次世代PlayStation用のメディアとして使われるが、 まだまだDVDを凌駕して普及させるということに関しては、不透明な部分が大きい。
しかも記録型の場合、ここ2、3年でようやくDVDレコーダーの人気が出てきたばかりだ。この状況で「次世代DVDへ移行してください」 と企業側が言ったところで、少なくともビデオレコーダーの分野では消費者はしばらく動かないだろう。
このように考えていくと、次世代DVDが音楽分野におけるSACDやDVD-Audioと同じ運命をたどってしまう可能性もある。 著作権保護機能が強化されるといっても、それはあくまで著作権者の利益であって消費者の利益ではないのだ。 さらに規格統一がうまくいかなかったということも、悪い流れを強めてしまったことは間違いない。
しかしその一方で、一定以上の普及が予想されるゲーム機での採用など追い風が吹き始めたのも事実。どちらに転ぶかはわからないが、 今後の動向を見守りたい。
投稿者 KATANA : 2005年07月11日 14:02
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